ようこそ、いらっしゃい。スナック茜へ。
会社の総務部(一人)を一人で切り盛りしている茜ママ。
すんなり転がって欲しい仕事ほど、なかなか進まずやきもきしている様子。
今日はどんなお話が聞けるでしょうか。
球体。
図工とか美術の授業ってあったわよね。
私、好きだった。
絵を描くのも、物を作るのも。
図工とか美術とかって2時間枠だったりするから、すごく自由な時間をもらった!って。
私だけの時間、作る…ううん、創ることを許された時間。
ことにすごい集中力を発揮していたと思う。
公園でね、写生するっていう授業があったの。
皆はすべり台とか、ブランコとか風景を描いてた。
私はね、自由を盾に木を描いた。
まっすぐ伸びる一本の木にインスピレーションが湧いたの。
先生(F先生ではない)が
『茜ちゃん、もう少しかかる?』
って迷惑そうに聞くくらい、私は木を描いた。細部にまで渡って。
楽しかった…。
自慢なんだけどね、絵で賞をもらったこともあるの。
その絵、母親に捨てられたけどね。
そんな図工、美術が大好きな私。
多分、中学一年の頃なんだけど、紙粘土でいろいろ作ろうっていう授業があった。
自由。
私に許された、紙粘土の自由。
皆はね、実用的なものを作り出した。
小物入れとか、貯金箱とか。
でも、私は自由に作りたかった。
どうせ、小物入れを作っても…なんて思ってない。
私は美術の作品として、何かを作りたかった。
…それで作ったのが、球体だった。
こねて、丸めて、やすりをかけて…
球体を極めたかった。
先生に
『まだこねてるの?』
って言われた。
違うの。
もう8割完成していたの。
その時点で。
こねてるんじゃない。
磨きをかけてたの。
あ…
先生はね、本当はもう終わって欲しかったんだと思う。
やすりをかけてる時にそう聞いたから。
大人になったからわかるの。
でも、当時は…何もわかってない、美術を語るに足らない三流教師だって中学生の私は思ってた。
賞を取った絵は捨てられた。
けど、その球体だけ…何故か家にあった。
それがこれ。
当時はね、極めた…って思ってた。
ふぅ…私、球を極めた、地球を極めた…って。
アーティスト、茜の誕生だった。
でも、よくよく見たら、いびつだった。
全然極めてなかった。
これをとっておいてくれたのは、お父さんなんだけど…お父さんは何を言いたくて、これを残してくれてたんだろ…って最近思うの。
お父さん、優しいお父さんだった…。
あ、まだ健在よ。
今でも優しいけど、たまに逃げる。
家庭の事情はまた今度ね。
今度、美術館に行ってみようと思う。
よかったら、ご一緒に…どう?
かしこ。
コメント
球なんて奥が深いっす。
中学生の時に紙粘土で手を作るって授業があって、色も付けて茂みに捨てました。取りあえずは無難に出来上がったけど、それを家に持ち帰るのがめんどくさくて、途中の山の中に捨てました。
夏休み中に警察が来たみたいです、死体と見間違えて。
夏休み明けに学校で誰のか分からないけど残念なお叱りが警察からありましたと校長先生から全校集会でグチられました。
着地点無し。
お後がよろしいようで…。
悠汰さんいけないわ。
それ、不法投棄になっちゃう。
でも、死体遺棄と間違えられちゃうなんて、ご立派な手だったのでしょうね。
想像するに、色が青ねずみ色だから腐乱死体に見えちゃったのかもですね。
粘土って奥が深いですね。
お後がよろしいようで。