ようこそ、いらっしゃい。スナック茜へ。
会社の総務部(一人)を一人で切り盛りしている茜ママ。
BRRRN♪事件からそこそこの月日が経ちました。新しい相棒は見つかったのでしょうか。
いつもの様にタバコに火をつけながら、茜ママがお話を聞かせてくれました。
手ブラ。
お財布を拾ったの。
ムラタくんとタバコを吸ってた時のことよ。
会社の喫煙所は1階の外にあるの。
そこで見つけたの。
持ち主のわからない財布。
正直、しまった!って思ったわ。
財布の中を見てみたら、現金と保険証と免許証が入ってて、これは持ち主が相当困るパターンじゃないの!って。
ムラタくんと相談をして、警察に届けることにしたの。
でも、途中でやめたわ。
私たちはタバコを吸いにきただけ。
私たち自身が身分を証明するものがなくて、このまま警察に行ったら面倒…って思ったの。
保険証に会社の名前があったから、ネットで調べてムラタくんが電話をしてくれた。
いろいろたらいまわしにされたあとに、本人から電話がかかってきて、受け渡しをすることになった。
そのうち電話がかかってきて、私も拾った身分ということでムラタくんと一緒に現場へ同行したの。
先にも書いたけど、免許証、保険証、お金が入っていた大事であろう財布だったのね。
だからね、期待した。
それでね、練習した。
菓子折りが届いて、お気になさらず~…でももらう、っていう場面をムラタくんと1階につくまでのエレベーター内でリハーサルした。
リハは完璧だった。
水ようかんがいいねとか、ケーキでもいいとか、話してた。
でも、ムラタくんはちょっとだけ複雑な顔をして言ったの。
『代理の人が来てるって…。』
代理の人は私たちがお財布を拾ったところから50メートルくらい離れた別の場所にいた。
ムラタくんが電話で話してる。
場所を説明しているけど、代理の人がイマイチ理解してくれないみたい。
ムラタくんの心の中の菩薩がどんどん死んでいくのが見てとれたわ。
面倒になったんでしょうね。
ムラタくん、歩き出した。
すごい速さだった。徒歩なのに。
私はそれを追いかけたの。
ムラタくんから出てくる、菩薩の死骸を浴びながら。
受け渡しは10秒もかからなかった。
私もムラタくんも、さっきのエレベーター内のリハが無駄になったことに気づいたから。
本当に何もなかった。
ねぇ…
そのお財布がなかったら、とんでもないことになっていたんじゃないの?
本人から何か指示はなかったの?
物理的なお礼をしてこいって…。
歩き出した。
ムラタくんと一緒に来た道を歩き出した。
見返りなんて求めたらダメよね。
私たちが悪かった。
だって拾っただけだもの。
それを届けただけ。
普通よ。
日本じゃ当たり前のことなのよ。
なくなったのは、ムラタくんの電話代だけ。あと菩薩。
代理の人が車に乗ったのを見計らって、私は叫んだ。
『手ブラかよ!!』
そして、私たちは走り出した。
明日へ向かって。
かしこ。
コメント
うん、期待するとそうなるよね(‘(ェ)’;)
良い行いというのは、今すぐ返ってこなくても、いつかどこかで必ず形を変えて返ってきますよ。
まぁ、ウソだけど(‘(ェ)’;)