ママ…一杯、飲ませてよ。
ここは哀しい女が集う『スナック茜』
今夜も焼酎とレゲェパンチで喉を傷めた茜ママのもとにお客さんが。
『ママ、薄めのカルーアミルクを…。』
お客さんはミナライちゃんでした。
酔ったミナライちゃん、どんなお話を聞かせてくれるのでしょうか。
日光修学旅行の夜に
ムラタさん、そして茜ママと、修学旅行の思い出話が続いたわね。
だから私も、ちょっと気恥ずかしい修学旅行の思い出を話そうと思うの。
小学校の修学旅行の夜のお話。
みんなお風呂から上がって、髪の長い女の子は肩にタオルをかけて濡れた髪のまま、キャッキャお喋り。
そんな夜の自由時間。
同じクラスの女の子と話す私のもとへ、となりのクラスの友達、M美が私を探してやってきたの。
普段からもう元気、かなり元気な子なんだけど、けっこうな勢いでやってきたわ。
M美「ちょっと耳塞いでて!」と、私と同じクラスの女の子へ。どうやら私だけへの内緒話があるみたい。
私 「?」
M美「Sくんが○○ちゃん(私)のこと好きなんだって!!」
私 「!?」
でも待って。
ありえない。
だって、Sくんは頭も良くて、スポーツもできる、そしてM美のクラスでおそらく1番格好よくて、1番人気のある男の子。
私 「えー うそでしょー」
M美「ほんとだよ!だって今、Sくんと1番仲良いTくんに聞いたんだもん!」
それだけ言い、また隣のクラスの子たちの輪へ走って戻っていったM美。
その夜遅く、私たちの部屋は私と、学年一美人な女の子Oちゃんの二人だけが起きていた。
Oちゃんは勇敢にも、先生の監視のある廊下をすり抜けてとなりの部屋やたしか男の子の部屋にも遊びに行っていたんだけど、私にはできなかったの。
怖くて。
今思うと、もったいないことしたわ。
時には冒険も必要よね。
一人で起きていたその時間、きっと私、
Sくんのこと考えていたと思う。
覚えてはいないけれど。
そのSくんといえば・・・
小学校6年間、1度も同じクラスにはなったことがなくて、しいて言えば、
習い事が同じなだけ。
1度も言葉を交わしたこともなかったわ。
私はといえば・・・
委員会や行事の仕事も頼まれることが多くて、正直、目立つほうではあった。
けれど顔も目はパッチリでもないし、見た目は普通な感じ。
(そういえば、同じ委員会の男の子に目つき怖いって言われたことがあったわ。
けどそんなにいうほど怖くない。失礼ね)
「やっぱり、なんで?」
初めて味わうような、ふしぎなドキドキ感を残して、その夜は終わったの。
この話、つづく、かもしれないわ。
ママ、また飲みに来るわね。
では ごきげんよう