ようこそ、いらっしゃい。スナック茜へ。
会社の総務部(一人)を一人で切り盛りしている茜ママ。
何かの拍子にエアインチョコ、さくっとぬ~ぼ~…と懐かしいお菓子の話になりました。
その途端、顔をくもらせた茜ママ。
ぬ~ぼ~に何があったのでしょうか。
t.A.T.u。
ぬ~ぼ~ね。
私も食べたことあるわよ。
あんまり甘いものが好きじゃなかったのと、1個50円くらいしたのとで、何回も食べたわけじゃないの。
だからってぬ~ぼ~が嫌いなんじゃないの。
ぬ~ぼ~のCMしている人の名前がね…うん。
初めての人がマーシーだった。
年は一つ下。
耳や口にピアスをつけてて、傷がオレの勲章…みたいな恥ずかしい人だった。
彼にはタトゥーも入ってた。
腕に死神がいたの。
まだその画像が携帯に入ってて、びっくりした。
私、まだ死神と?って。
でも、消せなかった。
思い出を消せなかったんじゃない。
まだ若くてつややかな私を残しておきたかったの。
そう。
マーシーは腕に死神。
それと腿に太陽がいた。
ムラタくんにその話をしていた時だったの。
B’zの歌に合わせて、のんきに伝えた。
腿にね太陽の小町!エンジェー…
『ル』に到達する前に思い出したの。
そのタトゥー…太陽ね。
太陽彫ったの、私だった。
私、今は総務で働いてて、その前は保育士してて、あれこれバイトもしていたけど…
一番最初は彫り師だった。
これには私もびっくりだった。
どうしてそうなったのか覚えてない。
でも、彼の足もとにひざまずいて、割りばしに針をつけたお手製の道具で、彫った。
すごく時間がかかったと思う。
一週間くらい。
毎日会ってたわけじゃないの。
全日数にしたらそれくらい。
彫る時って痛いでしょ。
痛みをこらえるために、マーシーは私の髪を強く引っ張った。
私も痛かった。
やめればいいのに、やめられない…そういう若さがあの頃にはあった。
直径10センチほどの太陽が彼の腿に宿った。
私は彫り師だった。
そして、彼が最初で最後の…彫り師・茜の作品だった。
ごめんなさい。
もう時効よね。
お互い合意の上だったものね。
彼が傷害事件として彫り師・茜を訴えませんように。
マーシーという言葉が出るたびに、私は誰ともなしに祈っている。
かしこ。