ようこそ、いらっしゃい。スナック茜へ。
会社の総務部(一人)を一人で切り盛りしている茜ママ。
先日の健康診断、めでたく御開帳されたそうですが、他にもあれこれあったようです。
一口ずつお茶を飲みながら、茜ママが話し始めました。
バレリーナ。
ありがとう。
健康診断の時の話、またしてもいい?
イジワルしないで聞いてちょうだい。
私、初めてバリウムを飲んだの。
そこで知ったこと…それは、バリウムをただ飲めばいいのではない…ということだったの。
まずね、胃を膨らますための粉を飲まされるの。
少量の水で。
これじゃすべてを飲み込むことなんてできない!っていう量のお水。
それでも効果はてきめんよ。
すぐに胃がふくらんできて、ばふってなりそうになったの…ゲップで。
ゲップをしたらいけないって聞いてたから我慢した。
なるべく話さないようにした。
それを知っているのか、看護師さんが言うの。
ゲップしちゃったら、また飲んでもらうだけですから…って。
私、絶対負けないって決めた。
その途端、出たわ。大きめのが。
そんな状態で指示が出されたの。
バリウムを飲んでくださいって。
ついに来たか…と観念した私はバリウムに口をつけてみた。
甘いのね。
嬉しかった。
もっとかたくりこを混ぜただけの機械的な味がすると思っていたから。
だから私は平成の時代に甘いバリウムが飲めたことに感謝した。
でも、バリウム検査が甘かったのはここまでだった。
そこから機械の上に寝て、いろんな角度から胃を検査していくのね。
いろんな角度、すごく…すごく辛かった。
ベッドの上でね、ひたすら回転させられるの。
右回り、左回り、台が傾いて右回り、左回り…さらに傾いて…
私は踊らされた。
このまま死ぬまでゲップもできないまま踊らされるのかしら、というくらい踊らされた。
しかも細かいの。
踊りの指示が。
右にちょっと傾けて…傾け過ぎです、次は左に…
その間、ゲップは我慢。
自由に踊らせてはもらえなかった。
髪の毛を直す間もなく踊らされて、最後に機械で腹パン(おなかをパンチするの)されて終わったわ。
とても辛かった。
バリウムが甘かった分、辛かった。
だから、『つらい』を漢字で書くと『からい』になるのかなって考えたわ。
検査の時、ずっと部屋は真っ暗だった。
私は闇の中で踊り続けた。
誰にも見てはもらえない。
私はゲップが出せない、バレリーナ。
いつまでも、暗闇の中で踊っている。
かしこ。