ようこそ、いらっしゃい。スナック茜へ。
会社の総務部(一人)を一人で切り盛りしている茜ママ。
そろそろ夏休みですし、どこか温泉があるところでゆっくりっていうのもいいですよね。
今日はどんなお話が聞けるでしょうか。
じゃんけんぽん。
温泉でね、じゃんけんをしたことがあるの。
相手は女の子。
あ、お風呂場でじゃんけんしたのね。
最初に母娘が入っていて、私があとから一人でお邪魔したっていう感じ。
女の子はとっても気さくな子で、一人でお湯に浸かっていた私に話しかけてきてくれたの。
嫌じゃなかった。
とってもかわいい子だったし、ゆっくりお話しながら入るのも楽しいし。
お母さんの方はごめんなさいねっていう感じだったけど、私は楽しくその子とおしゃべりしてた。
ふいにね、女の子がじゃんけんしようって言い出したの。
湯船のへりに座りながら。
多分、ちょっとのぼせてきちゃってたのね。
だから、クールダウンのためにじゃんけんを提案したんだと思う。
そのじゃんけんっていうのがね、まさかの足じゃんけんだった。
嫌な予感はしていた。
へりに座ってじゃんけんって言い出した時から、これは何かあるなって思った。
私が聞く前に説明がなされた。
グーがこれで…
チョキがこれで…
足じゃんけんだからね、私にはよくわかっていた。
だから、パーだけは…パーだけはダメ!って思ったの。
女の子に素敵なレディになってもらうために。
だれかれ構わずパーを出す女にならないように。
私は考えを巡らせたの。
パーで勝たせるわけにはいかない。
もちろん私もパーを出すわけにはいかない。(レディとして)
そうするとね、私はチョキを出すしかないの。
グーで勝ってもらえば、操は守れるはずだから。
じゃんけん大会が始まった。
たった二人だけの大会だった。
私はグーとチョキを出し続けた。
女の子に、『このお姉さんはグーとチョキしか出さない!』って思わせるため。
ううん、女子は足じゃんけんという試合でパーを出してはいけないって思わせるため。
試合は何戦も続いた。
グーを出しては、チョキを出し…チョキを出してはグーを出す。
私は氷の微笑のワンシーンのように足を組み換え続けたの。
ふいに女の子のお母さんが『お姉さんにそんなことやらせちゃダメでしょ!』と、女の子を叱りつけた。
ナイス!って思った。
でも、できればもう少し早め…ううん、開戦前に言って欲しかった。
そんなことがあってからか、私は私生活でもパーを出す機会がなくなってしまった。
誰かグーでもチョキでもいい。
私にパーを出させて欲しい。
スポーティに生きていきたい。
かしこ。